考古学から人材ビジネスへ。そんな異例のキャリアを重ねてきた人がいます。学問とビジネスの世界は離れている、とも言われますがその隔たりを越え、学問で得てきた価値観をビジネスの世界へ動員し、学問とビジネス、2つの価値観を繋いでいます。そんな岡安さんの生き方、転職の転機、これからの転職市場について語っていただきました。
岡安 伸悟| おかやす・しんご
1978年生まれ、大学時代より日本・イタリアにて考古学を学び遺跡発掘・研究に従事。
2007年 株式会社アイデムに広告制作担当として入社。2010年 同社新規事業開発を担当後、事業企画・マーケティング業務に従事。動画マーケティング【アイデム演劇プロジェクト】、コンテンツマーケティング【ジモコロ】をディレクション。
2016年9月 株式会社アイデム 退職
2016年10月 Indeed Japan株式会社 Director of Sales
みなさん初めまして。考古学者の岡安伸悟です。嘘です。Indeed Japan株式会社の岡安伸悟です。いきなり嘘つきですみません。昨年の2016年10月より現職になりますが、それまでは別の会社で人材ビジネスに10年程従事していました。そして実はその前に携わっていたのが考古学でした。
■学生時代に養った世界を見つめる視点。大学卒業までの道のり
中学時代にはマスター・キートンの影響もあり考古学者を目指すようになりました。まずは語学が必要だろうと、高校の時に海外留学。帰国後に考古学を専攻できる大学に入学し、1年目より遺跡発掘に参加していました。その後、イタリアには日本の大学卒業後改めて2002年〜2006年の間イタリアの国立大学に在籍しましたが、結婚・出産を機に帰国。
イタリア時代の詳細は特に記載しませんが、日本とイタリアでの文化財に対する姿勢の差異を学べたことが一番の収穫であり、またその経験からビジネス社会にキャリアチェンジする際に自らの特徴、能力として歴史学的視点を持つことができるようになったと考えています。
■異国、異文化から日本の人材ビジネスに
帰国後、就職先に選んだのがアイデムという人材サービス会社でした。28歳社会人経験なし。日本での就労経験在籍先なし。つまりはニートの私が「タウンワーク(本当はジョブアイデム)を見てお電話しました」と、たどたどしく応募し、DTPなんて商用環境でやった事ないのに「QuarkXPress、Photoshop、Illustrator完璧です」と見得を切りました。
「なんでこの会社選んだの?」という質問に、「家から自転車で通える距離だったので!」と言う志望動機で運良く入社できました。
ジョブローテーションをしていく中で最終的にオンライン・オフライン問わずプロモーション領域に大きく関わることになりました。会社全体の売上を拡大し、利益を上げること。そのために営業推進策を検討・実施し、媒体への集客を強めること。それらがミッションです。
プロモーションを実施する際に、「労働を通し(あなたは)どう在りたいか」を想定し、「(あなたにとって)私たちのサービスは有益です」「私たちは(あなたの)味方です」と言うメッセージを込めます。これを考える事が私にとっては一番厄介な、骨の折れる仕事でした。
商業的、経済的なビジネスマンは、当たり前の話ですが前提としてマネタイズを考えます。つまりは儲かるかどうかを優先した後に、倫理的な整合性を取るので、検討の道筋はある意味固定化されています。私の場合はその段階から手が止まってしまうのです(思考は止まりませんが)。
■仕事をしていく中で目指していたこと
前段でも触れたように、私は人材ビジネスに携わるまで考古学という分野にいました。学問分野においても社会科学なのか自然科学なのか、とてもイメージがし難い分野ですが、いずれにしても“人”を捉え考えることは今の仕事に共通していました。
特に“労働”という概念については、どの時代を通しても“人”についてまわります。労働市場という、一見考古学からは遠いマクロ経済の分野ではありますが、今の仕事を通して改めて“人”の歴史を立体的にイメージができる様になりました。
例えば、私は仕事をしたくありませんと言うと語弊がありますが、正しくは私は仕事を“させらたく”ありません。望まぬ労働に強制的に就かされるよりも、できる限り自分の生き方に寄り添った労働状況であればと思います。とは言えいずれにしても人は働かざるを得ません。マルクスが言及した歴史の発展様式や生産様式に代表される様に、主義・思想がどうであれ、“人”と“労働”の関係性を改めて考えさせられたのです。
■コンテンツマーケティングとコンテキストマーケティング
とても抽象的な表現になりますが、“人”の“労働”を規定し強制するものは何か。また“人”が盲目的に、いわゆる思考停止をし“労働”を受け入れる社会が、またその上位数%が資本を持つ者として目指すべき目標として認識される社会が、私たちが本来的に望んでいる社会なのか、そんな中二病的な問いを繰り返し再考する様になりました。
「労働を通し(あなたは)どう在りたいか」ばかりを考え続けてしまうのです。もちろん統一的な答えなどありません。そんな事を繰り返している中で、コンテンツマーケティングという手法がトレンドとしても注目される様になりました。当初は他の企業と協力しながら、アイデムとしての型を模索していきました。その過程でジモコロに辿り着きました。正しくは、柿次郎さん※に出会いました。
<後編へ続く>
※柿次郎さん・・・株式会社Huuuu代表取締役の徳谷柿次郎氏。どこでも地元メディア「ジモコロ」編集長として全国47都道府県をまわっている。
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