初めて退職届を書くとき、理由欄の扱いに戸惑う方は多いのではないでしょうか。お世話になった会社には角を立てずに、でも自分の気持ちもきちんと伝えたい…そう考えると、ペンが止まってしまうのも無理はありません。退職届の理由にどのような内容を書けばいいのか悩む方は多くいらっしゃいます。

本記事では、退職届の理由について、

• なぜ理由を書く必要があるのか
• 「一身上の都合」で済ませても良いのか
• ケース別の具体的な理由の書き方

など、退職に関するあなたの疑問や不安を解消し、円満退職をサポートするための情報をまとめました。

この記事を読めば、退職理由で悩むことはもうありません。
あなたの状況に合わせた理由の書き方がわかり、スムーズに退職の手続きを進められるようになるでしょう。
ぜひ最後まで読んで、あなたの退職を円満なものにしてくださいね。

1. 退職理由の重要性：なぜ退職理由を書く必要があるのか？

そもそも、退職届に退職理由を書く必要はあるのでしょうか？
法律で退職理由の記載が義務付けられているわけではありません。
しかし、会社に退職の意思を正式に伝える書類として、退職届は重要な役割を果たします。

退職理由を書くことの意義

• 会社への報告と記録

退職届は、あなたが会社を辞める意思表示を正式に行うための書類です。退職理由を記載することで、会社はあなたの退職を正式に受理し、退職の手続きを開始します。
また、退職理由は会社の人事記録として保管され、今後の人事管理や組織運営に活用されることがあります。

• 退職後の手続きに影響がある場合も

退職理由によっては、雇用保険の失業給付の受給開始時期や、退職金、社会保険の手続きなどに影響が出る場合があります。
例えば、会社都合退職の場合は、自己都合退職よりも失業給付の受給開始が早まることがあります。 退職理由を明確にすることは、退職後の生活設計にも関わる重要な要素となるのです。

• 円満退職のため

退職理由を伝えることは、会社にあなたの意思を理解してもらい、円満退職につながる可能性を高めます。もちろん、詳細な理由を伝える必要はありませんが、退職に至った背景を伝えることで、会社側も理解を示しやすくなります。
感謝の気持ちとともに、前向きな理由を伝えることができれば、より円満な退職に近づくでしょう。

退職理由を書く際の注意点

• ネガティブな表現は避ける

退職理由は、会社の批判や不満を書き連ねる場ではありません。ネガティブな表現は避け、事実に基づいた内容を記載するように心がけましょう。退職後も会社との関係が続く可能性も考慮し、円満な退職を心がけることが大切です。

• 簡潔にまとめる

退職理由は、長々と詳しく書く必要はありません。要点を絞り、簡潔にまとめることを心がけましょう。退職理由は、あくまで会社への報告と記録のためのものです。 個人的な感情や詳細なエピソードは、退職時のあいさつや送別会などで伝えるのが適切です。

退職理由は、形式的な側面だけでなく、あなたの社会人としてのマナーを示すものでもあります。適切な理由を記載し、円満な退職を実現しましょう。

2. 「一身上の都合」でOK？ケース別の判断基準と例文集

退職理由として最も一般的なのが「一身上の都合」と記載することです。履歴書や職務経歴書でもよく目にする表現ですが、退職届にもそのまま使えるのでしょうか？

結論から言うと、通常であれば「一身上の都合」でも問題ありません。

「一身上の都合」は、自己都合退職の場合に広く使える便利な表現です。自己都合退職の場合は、具体的に理由を述べる必要がないため、様々なケースに対応できます。

「一身上の都合」が使えるケース

• 転職

キャリアアップやより興味のある仕事内容を求めて行うのが転職です。新しい環境でチャレンジしたいという前向きな理由は、「一身上の都合」で問題ありません。

• 結婚・出産・育児

結婚を機に退職する場合や、出産・育児に専念するために退職する場合など、ライフスタイルの変化による退職も、「一身上の都合」で差し支えありません。

• 介護・家庭の事情

家族の介護が必要になったり、家庭の事情で退職せざるを得ない場合は、プライベートな理由となります。個人的な事情の詳細を会社に伝える必要がないので、「一身上の都合」が適しています。

• 病気・体調不良

病気や体調不良により、現在の業務を続けることが難しい場合など、健康上の理由もプライベートな情報です。「一身上の都合」で基本的に問題ありません。なお必要に応じて病気や体調不良であることを一言添えても問題ありません。

「一身上の都合」以外で具体的に書いた方が良いケース

• 会社都合退職

倒産、解雇（懲戒解雇を除く）、希望退職、退職勧奨など、会社の都合で退職する場合は、「一身上の都合」ではなく、会社都合であることを明確に記載する必要があります。会社都合による退職は、雇用保険の失業給付や退職金などに影響があるため、正確に記載することが重要です。

• 会社の倒産

個人的な事情ではなく、会社の都合による倒産に伴う退職です。「貴社、業績不振による倒産」など倒産であることを明記しましょう。

• 会社移転に伴う通勤困難

本来は通勤できていたところ、会社の事情による移転によって通勤が難しくなったことによる退職は、会社都合にあたります。「貴社〇〇社の移転に伴い、通勤が困難になったため」と会社都合によって招かれた事態であることを記載しましょう。

• 退職勧奨

退職勧奨による自主的に退職であっても、退職勧奨は会社の業績不振が招いた結果であるため、会社都合の退職となります。「貴社、退職勧奨のため」と自身が退職勧奨の退職者になったことが伝わるよう明記しましょう。

自己都合退職の退職理由は「一身上の都合」でOK

「一身上の都合」とは私的な理由による退職を意味しますが、ここで言う私的の範疇には自身のことだけでなく、家族のことも含まれます。そのため会社都合に該当しない退職理由については基本的に「一身上の都合」とのみ記載します。

なおパワーハラスメントが要因の場合、本来であれば会社都合の退職となるところを、会社側がパワハラを認めずに自己都合退職として処理されてしまう場合があります。退職理由は正しいものを記載しないと失業給付などで不利な状況になる可能性があります。会社に正しい退職理由の記載を求めるにあたり、相談窓口で相談してみると良いでしょう。

ケース別：退職理由の例文集

ケース	退職理由の例文	書き方のポイント
転職（キャリアアップ）	一身上の都合により、今月末日をもって退職させていただきます。	「一身上の都合」で問題ありません。
転職（より興味のある仕事内容）	一身上の都合により、今月末日をもって退職させていただきます。	「一身上の都合」で問題ありません。
結婚	一身上の都合により、今月末日をもって退職させていただきます。	「一身上の都合」で問題ありません。
出産・育児	一身上の都合により、今月末日をもって退職させていただきます。	「一身上の都合」で問題ありません。
介護	一身上の都合により、今月末日をもって退職させていただきます。	「一身上の都合」で問題ありません。
家庭の事情	一身上の都合により、今月末日をもって退職させていただきます。	「一身上の都合」で問題ありません。
病気・体調不良（「一身上の都合」）	一身上の都合により、今月末日をもって退職させていただきます。	「一身上の都合」で問題ありません。
病気・体調不良（具体的に記載）	「一身上の都合」で問題ありません。	より詳しく退職理由を記載したい場合は「一身上の都合」（病気・体調不良）と一文の追記ですませましょう。
会社都合退職（倒産）	貴社、業績不振による倒産により、今月末日をもって退職させていただきます。	会社都合退職であることを明確に記載します。
会社都合退職（会社移転）	貴社〇〇社の移転に伴い、通勤が困難になったため、今月末日をもって退職させていただきます。	会社都合退職であることを明確に記載します。
会社都合退職（退職勧奨）	貴社、退職勧奨により、今月末日をもって退職させていただきます。	会社都合退職であることを明確に記載します。退職勧奨の記録や合意書類なども保管しておきましょう。

3. ケース別：退職理由の例文と書き方のポイント

ここでは、さらに様々なケースを想定して、退職理由の例文と書き方のポイントを具体的に解説します。
例文を参考に、あなたの状況に合った退職理由を作成してみましょう。

ケース１：人間関係に悩み退職する場合

例文：

一身上の都合により、今月末日をもって退職させていただきます。

書き方のポイント

人間関係の悩みは、退職理由として伝えにくいデリケートな内容なので無理に具体的に伝える必要はありません。「一身上の都合」として形式上は問題ありません。
もし、退職面談などで理由を聞かれた場合は、

• 「より興味のある仕事内容にチャレンジしたい」
• 「キャリアアップを目指したい」

など、前向きな理由に言い換えて伝えるのがおすすめです。人間関係の悩みを具体的に伝えてしまうと、会社によっては引き止めにあったり、ネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。円満退職を優先するのであれば、触れない方が無難でしょう。

ケース２：より興味のある仕事内容が見つかり転職する場合

例文：

一身上の都合により、今月末日をもって退職させていただきます。

書き方のポイント

転職理由がより興味のある仕事内容へのチャレンジである場合は、自己都合による退職です。なお前向きな理由なので退職面談時に会社へ伝えやすいでしょう。
退職届には「一身上の都合」と記載し、退職面談などで詳細を伝えるのがスマートです。面談では、現在の仕事で得た経験を踏まえ、次のステップに進みたいという意欲を示すと、会社にも良い印象を与えられます。

ケース３：労働条件に不満があり退職する場合

例文：

一身上の都合により、今月末日をもって退職させていただきます。

書き方のポイント

労働時間、給与、休暇など、労働条件への不満は、退職理由として伝えにくいデリケートな内容です。人間関係の悩みと同様に、無理に伝える必要はありません。「一身上の都合」で形式上は問題ありません。
退職面談などで理由を聞かれた場合は、

• 「家庭の事情により労働条件を見直したい」
• 「よりワークライフバランスを重視したい」

など、労働条件への不満を直接的に表現せず、家庭の事情やワークライフバランスといった言葉に置き換えて遠まわしに伝えるのがおすすめです。労働条件への不満を具体的に伝えてしまうと、会社との関係が悪化する可能性があります。円満退職を優先するのであれば、触れない方が無難でしょう。

ケース４：育児や家庭の事情で退職する場合

例文：

一身上の都合により、今月末日をもって退職させていただきます。

書き方のポイント

育児や家庭の事情は、退職理由として会社に理解してもらいやすいでしょう。退職届には「一身上の都合」と記載しても問題ありませんが、退職面談などで詳細を伝えても差し支えありません。
より具体的に伝えたい場合は、育児や家庭の事情の詳細を具体的に伝えることで、会社の理解と共感を得やすくなります。ただし、詳細を伝える場合は、プライベートな情報なので、開示範囲に注意しましょう。

ケース５：病気や体調不良で退職する場合

例文：

一身上の都合により、今月末日をもって退職させていただきます。

書き方のポイント

病気や体調不良も、退職理由として会社に理解してもらいやすいでしょう。退職届には「一身上の都合」と記載しても問題ありませんが、病状によっては、会社に病気や体調不良について伝え、退職の合意を得ている場合もあるでしょう。
ただし、病気や体調不良を理由とする場合は、診断書の提出を求められる場合があります。
また、雇用保険の失業給付の受給や、傷病手当金の受給など、退職後の手続きに関わる重要なポイントとなるため、会社やハローワークに事前に相談しておくことをおすすめします。

## まとめ

退職届の理由の書き方について、ケース別に解説してきましたが、いかがでしたでしょうか？

退職理由は、形式的な側面と、会社への意思表示としての側面を併せ持ちます。
「一身上の都合」で形式上は問題ありませんが、退職理由を伝えることで、会社との円満な関係を保ち、スムーズな退職に繋がることもあります。

本記事を参考に、あなたの状況に合わせて退職理由を検討し、円満退職を実現してください。
あなたの新しい門出を応援しています！