消極的なことは悪ではない!まずSHYより始めよ、消極性仕事デザイン

このエントリーをはてなブックマークに追加

仕事や転職の場では常に「積極的な姿勢」が求められています。声の大きな人にせっかく上げた声がかき消されるということもしばしば……。しかし、消極的であっても活躍できる道があるはず。そのヒントを得るために、消極性研究会代表の栗原一貴さんにお話をうかがいました。

栗原一貴|くりはら・かずたか

津田塾大学学芸学部情報科学科准教授。消極性研究会代表。物議を醸すシステム開発を得意とする情報科学者。
著書に『消極性デザイン宣言』がある。
2012年、イグノーベル賞受賞。

SHYを認め、SHYから始める

—「消極的だ」と悪い文脈で使われる事が多い消極性という言葉ですが、消極的なことは悪いことなのでしょうか。

消極的なことは悪いことであると考えていません。消極的であるということは、裏を返せば自分を律する心が強いことや、誠意があるからこそ熟慮した発言をしたいという気持ちの現れであると考えることができます。またそもそも努力で改善すべき怠慢ではなく、一面的な個人の性質であるので、いい悪いで判断する内容でないということもあります。

—見方を変えてみるということですね。

例えば会社の会議などで、どんどん発言して場を引っ張っていく人がいたとします。もちろん全員がそうだとは言いませんが、その発言には配慮に欠けていることがよくありませんか?

だいたいそういう人のそばには、あまり目立たないけれど、その人や場をうまくコントロールする副官のような人がいる場合が多いんです。副官のような存在の人は主張することがないので目立ちにくいので、誰にも気が付かれず、評価もされにくいのです。

—その静かな働きを可視化していくことで変わることもありそうです。

はい、ただ、可視化はその人の努力というより場のデザインに寄るところが大きいかと思います。もちろん、消極的な人が自分自身で「これくらいならやってもいいかな」というところまでやっていく努力は必要です。しかしそれと同等かそれ以上に会社が集団としてよりよくやっていこうとする向きがあるなら、集団として変わっていくべきだと思います。

とはいえ、消極的な人の活躍の可視化についてまだ知見がほとんどない状態なので上司に『消極性デザイン宣言』などを贈ってみて、啓蒙をしていくことからはじめてみるといいかもしれませんね(笑)。

—周りに理解してもらうことが大切だと。「それにはパワーが必要……」という声も多いかと思うのですが、例えば会議などで消極的な人でも発言しやすいデザインなどのアイディアや先行事例はあるでしょうか?

会議室での会議の際に、匿名チャットを併用するというのはどうでしょう。これまでの口頭での会話の形は維持しながら、壁面などに匿名のチャット画面を開いておいて、チャットでの発言なども鑑みつつ会議を進めていくのです。

これをすることで、話を遮ってまで質問や意見を音として伝えるほどでもないという時に、匿名のチャットであればちょっとした疑問や意見も伝えやすいのではないでしょうか。

—想像するだけで面白そうですね。それなら消極的でも参加できそうです。

それに近い話で、東浩紀さんという哲学者が『一般意志2.0』という本を書いているのですが、その中でニコニコ動画が民主主義に与えうる影響を語っています。

内容としては、専門的なトピックに関しては基本的には専門家が話したほうがいいということなんですが、例えば”ニコニコ生放送”では公開討論をしている最中にリアルタイムで一般視聴者から匿名コメントが流れてくるんです。

そのコメントには(匿名ということもあり)視聴者の本音が出てきやすい。出演者はその画面を見ながら議論していくので、「完全にコメントに影響されるわけではないけれど、無視できるというレベルでもない」という絶妙なバランスで進行することができるのです。話の重要な部分は専門家に預けつつ、それ以外の声も拾うことができるいいバランスだと個人的には思っています。

—なるほど、匿名でも影響を与えていくことはできるのですね。

これを会社の会議に適用しても、伝統的な対面でのスタイルを取りつつも、ニッチな情報やサイレントマジョリティが可視化されるという点でいいと思います。あくまでも建設的にやる、ということが大切で、喋ることがダメ、とか否定から入るとあまり良くないので、積極的な人がいて消極的な人がいるというバランスを活かす意味合いで取り入れていったほうがうまくいくと思います。

転職の消極性デザイン

—現在の転職市場の消極性デザインはどのようなものが考えられるでしょうか?

辞める方の支援とか、いいと思います。話は飛びますが離婚のときは迷わず弁護士に頼め、というようなアドバイスが圧倒的に多いみたいですね。弁護士を仲介すると、相手に会わずに処理を進められてスムースにいく。

転職、というか退職する時についてもそういう代理人がいてくれたら良さそう。「今回の退職に関する弁護士はこの方です」という感じで現場に同席してもらって、一緒に進めていけば穏便に物事が進んでいきそうですよね。退職時のストレスはものすごいと思うので、そういった第3者が介入することが普通になることで、圧力に屈することなく、自分の行きたい道を選びやすくなるのではないでしょうか。

—それはぐっと気が楽になって、ハードルが下がりますね。

はい。毎回一人ひとりの転職に絶対代理人を同席させるコストがかかりそうであれば、何かあった時に弁護士に頼めるというようなサービスでもいいですね。

—そんな制度があればぜひ頼みたいです!

あとは、転職OG,OBにアドバイスをもっと気楽に求めることができるプラットフォームがあるといいですね。乗り換えみ検索サイトみたいに、「建設 to 飲食」というように直近の業種や職種と転職したい業種・職種をいれると実際に同じキャリアを辿った人の経験談が読めるというようなサービスがあると、消極的な人でも自分のペースで情報を得ていくことができると思います。

消極的な人が活躍する道は

—現在の社会の仕組みだと消極的は人が活躍しにくいように感じます。仕事でも積極的に手を上げた人が評価され、仕事も得やすいという話はよくのですが、消極的な人でも活躍しやすい道が構想レベルでもあれば聞きたいです。

そもそも、資本主義って”やる気主義”ではないはずなんです。ただ、今の構造上、精力的である方が利益を上げやすかったり、あるいはそういう前提で統一していたほうが管理をしやすいというだけで。

でも、群れなくても社会貢献や利益を作ることができるはずです。当然、群れなければやる気があったりなかったりというような波も比較的問題になりません。消極的な人はコミュニケーションに大きなコストがかかるから、自分のペースで淡々とできるような仕事に就くことがいいのだと思います。敏感で繊細な感性をしっかりとアウトプットできる環境をつくっていくと活躍しやすいです。

情報通信技術は個人化を進めていくことができます。リアルと比較してウェブのコミュニティはマイペースで都合の良いコミュニケーションを取りやすいという特徴があるので、自分がやりやすいペースで貢献できる場所を見つけやすいかもしれません。

—すでに組織に属している人はどうすればいいでしょうか?

正直、絶対にこれ、という道はなく、個人にできるのはごく周辺の環境を変えることかと思います。そのためのヒントは提供できるかと思います。

例えば以前、学会に行った時にどこかの大学の学生が「テンプレート通り」のプレゼンをしていたんです。何か質問があると、露骨な棒読みで答えていて。その無理矢理感、とってつけた感は失笑はかっていたのですが、その状況でも下手にカリスマプレゼンを真似しようとするのではなく、絶対に自分ができる範囲から逸脱せずに貫き通したということに私個人は誠意を感じました。

プレゼンが得意でなくても、「ここまでならできる」という範囲を定めてそれに実直なことで認められることもあります。消極的でありながらそこには主張がありました。

消極的な人はいつでもどこでも消極的なわけではなく、どこかに主張ができるベクトルがあるのだと思います。ただ、それを見つけるのは難しいので周りの人の協力を仰げるといいですね。

それと周囲は見方を変えてみるというのもいいかもしれません。先日、SNSで話題になっていた例があります。それはバスや電車の優先席で席を譲った人が賞賛されがちですが、実は最初から席を空けておいて立っている人の貢献もあるのではないか、という話です。

これもまさに消極的な社会貢献だと思っていて、見る側が視点を変えてみることでその貢献が見えてくるという一例です。

—周りからの認知のされ方が変わることでその人に対する評価も変わってくるのですね!

はい。もし、その組織が現代的で健全であれば、そういう人材もまた必要だとわかっているのだと思います。なので、もともと繊細な人にガツガツしていけ、と指導することが間違っていて、まずは素を出すことができる環境を見極め、消極的な人でも萎縮せずに自分の強い部分を人に伝えれるような状態に持っていけることが大切です。

「CAREER INDEX」は
国内最大級の求人数を誇る求人サイトです。

無料会員登録する

職務経歴書作成(無料)

関連記事を読む

キャリアインデックス社員おすすめ本【2020年9月】

キャリアインデックスでは、社員による3分間スピーチの時間があります。 9月のお題は「おすすめの本」でした。その…

興味を追い続けることがいずれ自身の道となる|LINE株式会社 執行役員 二木 祥平氏

今や日本人のほとんどが使っているコミュニケーションアプリ「LINE」。そのサービスを運営するLINE株式会社で…

自分の気持ちに正直に行動。世界で経験した広い視点で、金融サービスを変えていく。|株式会社LINE Financial 奥中綾さんインタビュー

今や国内の月間利用者が8000万人を超えるコミュニケーションアプリ「LINE」。その関連会社として、お金とユー…

スカウトメールの書き方(転職エージェント向け情報)

※この内容は、主に転職エージェントとして活動されている方への情報になります。 株式会社キャリアインデックスの曽…

冬の目覚めの悪さを科学してみる

朝起きるのが段々とをつらくなるこの時期、日の出が遅くなっていくのを日々感じますが、日の出が遅くなるペースは、徐…

恥を捨ててでも行動を起こすと世の中を変えられる。転職は決断する勇気|株式会社マネーフォワード 山本華佳さんインタビュー

自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」やビジネス向けクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」を展開す…

新着記事

シェアオフィス・レンタルオフィスの年間人気ランキングを「JUST FIT OFFICE」が発表 ~ 全国、および東京・大阪のランキング。再開発が進む渋谷が人気 ~

株式会社キャリアインデックス(本社:東京都港区、 代表取締役社長CEO:板倉 広高)は、同社の提供するシェアオ…

キャリアインデックスがChatGPTの社内活用事例を公開 ~ 従来30分程度かかっていた分析業務が数分に短縮 ~

◆ChatGPT Code Interpreter によって、30分の分析作業が数分に短縮   キャ…

webメディア「キャリアの実」で「CAREER INDEX」が紹介されました

「ユニークキャリア」が運営する「キャリアの実」でCAREER INDEXが紹介されました! 掲載記事は以下にな…

webメディア「ユニークキャリア」で「Fashion HR」が紹介されました

「キャリア形成のために利用したいメディアN0.1」webメディアの「ユニークキャリア」でFashion HRが…

メディアにご紹介いただきました

メディアにご紹介いただきました 1.転職ベスト 様 https://one-group.jp/media/ 以…

人材×IT領域webメディア「HRテックガイド」で「CAREER INDEX(キャリアインデックス)」と「Fashion HR」が紹介されました

転職情報メディアの「HR Techガイド」でCAREER INDEXとFashion HRが紹介されました! …