すべてのキャリアはいつか点から線になる―吉澤 一敏(株式会社サイボウズ・メディクル株式会社)

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現在、サイボウズと自ら起業した会社「メディクル」のパラレルワークを実践している吉澤さん。いま、最も新しい働き方を取り入れる人のひとり。

これまで、会計ソフトの「オービックビジネスコンサルタント」、医療・介護領域でサービスを提供している「エス・エム・エス」とキャリアを重ね、どのように現在の働き方に行き着いたのか。キャリアに迷う若手へのアドバイスを交えながら答えていただきました。

吉澤 一敏| よしざわ・かずとし

1977年生まれ。日本大学卒業後、 2000年より株式会社オービックビジネスコンサルタントに就職。会計ソフトのエンジニアとして主にWebアプリケーションの開発に従事。
2004年からは株式会社エス・エム・エスに転職。設立2期目より参画し、人材紹介事業の立ち上げ、新規事業責任者を歴任。東証マザーズ上場から一部上場までの成長期に貢献。
2014年からは、メディクル株式会社を創業し、代表取締役に。医療、介護、保育従事者向けの勤務表アプリをリリース。
2017年からはサイボウズ社に複業転職。(メディクル社は継続運営)マーケティング本部に所属し、kintoneを世の中に広める企画・プロモーション活動に従事。

複業に至るまでのキャリア 大企業からベンチャーへ。異なる業界、業種へのチャレンジ。

—現在は、メディクル株式会社という会社を経営しながら、サイボウズで働くというパラレルワークを実践していますが、そこに至るまでにはどのようにキャリアを重ねてきたのでしょうか

働き始める前から起業を考えていて、そのための技術をつけようとオービックビジネスコンサルタントとエス・エム・エスという2社で、それぞれ違う職種を経験してきました。オービックビジネスコンサルタントではソフトウェアの開発、エス・エム・エスでは介護・看護系の人材コンサルタントと新規事業開発を担当しました。

—どのような意図でその2社を選ばれたのですか?

新卒で入社したオービックビジネスコンサルタントは、会計ソフトの開発・運営を行っている会社です。私が入社した時はITバブル絶盛期で、自分が成長していくためには伸びている業界に身を置きたいと思っていました。また、後々起業する上で、会計知識は必要になると思い、それも学べるオービックビジネスコンサルタントは最適ではないかと。

当初、オービックビジネスコンサルタントでは営業職での採用だったのですが、研修を終えたあと開発職を希望しました。より幅広くITの知識を習得できる開発に魅力を感じたからです。

2社目のエス・エム・エスに転職したのは、これからどのようなサービスが必要になっていくのかを見極めるためでした。オービックビジネスコンサルタントで開発スキルは習得したものの、そのスキルで何を作ればいいのかというアイディアがまだなかったからです。

エス・エム・エスに巡り合った経緯としては、当時まずは「今後、日本国内で成長しそうな業界」を考えてみました。そうしたところ、超高齢社会がもうそこまで来ていて、どうやら医療・介護業界が伸びそうだと。そこまで分かったので、医療・介護関係で面白そうなサービスがないかネットで検索し、当時立ち上げたばかりのエス・エム・エスに偶然辿り着きました(笑)

見つけたのが代表のインタビュー記事だったのですが、同い年で、自分と同じところに目をつけていて、すでに行動に移している人。素直にすごい人だと思い、この人となら一緒に何かできるのではないかと思い、履歴書を送ったのです。

—上場企業からわずか数名規模のベンチャー起業に転職することに不安はありませんでしたか?

不安がなかったといったら嘘になりますが、正直そんなに深刻には考えていませんでした。今後会社を作ろうとしているのに、転職で日和っていたらダメだろうと思って(笑)。上場企業からベンチャー企業に転職することにリスクを感じなかった訳ではありませんでしたが、躊躇はしませんでした。

—かなり戦略的に転職されたのですね!

今振り返ると戦略的だったのですかね(笑)。

エス・エム・エスでは人材紹介のコンサルタントとして入社しました。最終的にエス・エム・エスも上場したのですが、上場したタイミングで新規事業立ち上げの機会をいただきました。新規事業の立ち上げというのは、会社に居ながらにして起業の経験をさせてもらうようなものでしたので、その後メディクルを創設する際にこの経験が非常に役に立ちました。

このような経験をさせてもらえたこともあり、エス・エム・エスには結局10年お世話になりました。

—そして満を持してメディクルを立ち上げたのですね。

はい、エス・エム・エスで働いて、医療・介護の業界でやるべきサービスが見えてきたんです。

メディクルでは勤務シフトのカレンダーアプリを公開しています。看護師さん、介護士さんに快適に使える勤務シフト管理アプリを作れば、絶対に使ってもらえる。これはすべてエス・エム・エスで日々、看護師さんや介護士さんと接していて学んだことでした。

—その後メディクルの事業はいかがでしたか?

リリースのタイミングが良かったのか、順調に進んでいきました。リリース後、すぐに業界内で周知され、現在では全国の看護師さんの約1/3に使っていただいています。介護士さんはまだまだ1/10程度の認知度なので、これからさらにシェアを伸ばしていけたらと思います。
(株式会社メディクル:https://www.medicle.co.jp/

複業という働き方、会社経営とサラリーマンの二足のわらじ

—そのなかでどうして複業という選択肢をとられたのですか?

結論から言うと一人で運営するのが「寂しくなった」というのが本音です(笑)。

チームでやり遂げる満足感とか、達成感を欲していたんだと思います。 なぜなら、アプリ開発のためのエンジニアやデザイナーは全てクラウドソーシングで繋がっていて、やり取りがチャット上で完結。直接顔をあわせて打ち合わせをするようなことがほとんどない状態だったからです。

そんな閉塞感を感じ始めていた矢先に、サイボウズの青野社長の著書に出会いました。内容を読んでみたら、まさに今私が欲している「チーム」について書いている。さらに柔軟な働き方を先進的に取り入れ、複業も推奨している社風だったので、ここなら私でも受け入れてくれるのではと・・・(笑)
→『チームのことだけ、考えた』(ダイヤモンド社)

そして、本を読んだその日に履歴書を送り、縁あって採用していただきました。

—実際に複業という働き方をとってみていかがでしたか?

今はサイボウズの仕事がメインで、自分の会社が複業みたいな感じになっています。バランスは取れていると思います。アプリの運営自体は、メンテナンスやアップデートを行うことが主な業務なので、それほど負担が多くない状態です

また、サイボウズは在宅勤務を許可する等、働き方がとても柔軟なので、家族との時間も問題なく確保できていています。私の子供はまだ小さく、3人もいるので本当に助かっています。

—現在サイボウズではどのようなことをやられているんですか?

当社で運営している「kintone」というサービスのマーケティング本部に所属しています。業務の内容としては、kintoneを世の中に広めることをミッションに、社内、社外問わず色々な方を巻き込んで、プロダクトの成長施策を実行しています。

具体的には他社との協賛セミナーを開催したり、kintoneユーザーを対象としたファンイベントの実施、導入を考えているお客様向けセミナー講師等、幅広く業務を担当させてもらっています。

これらの仕事は、これまでのキャリアにはなかった経験なので、自分にとってとても良いインプットになっています。

いつかキャリアは線になる。「やりたいことがあれば躊躇わずにチャレンジを」

—すべてのキャリアがうまくつながって、今の働き方になったということですね。一方で、今の20代・30代の中には自分のキャリア形成がうまくできずに悩んでいる人も多くいます。そんな方へアドバイスがあればぜひお聞かせください。

私のこれまでのキャリアは、ある意味戦略的だったとは思うのですが、一方で、「その場の流れで面白そうなところにいった」というのも事実です。後付けで綺麗に結びついたというか(笑)。

今改めて振り返ってみると、すべてのキャリアの点と点は結びつくのではないかと思っています。著名な事業家の方も言っていましたが、一見繋がっていないような点と点も、後から振り返るとかなりの確率で繋がっている。

場当たり的に仕事を辞めてしまったとしても、振り返ってみたらあの時のあの経験が活きてくる。確かに渦中にいると、自分のキャリアがぐしゃぐしゃになってしまっているように思ってしまうかもしれませんが、いつかその点と点は繋がるのので、現状のキャリア形成に後悔せず、一歩を踏み出すのがいいのではないでしょうか。

—3年は最低でも同じ会社で働こう、というような言説もあるようですが、それについてはどうお考えでしょうか。

私にはその感覚はあまりないです。3年いると一人前になるというようなことは確かに言われていますが、それは会社がその人を引き止めたい時に使ったり、あるいは転職に一歩踏み出せない人が自分への口実として使ったりするケースが多いのかもしれません。やりたいことがあったら、タイミング問わずチャレンジしてみるのがいいと思います。

日本では変化に柔軟な人こそ活躍できる

—これからサイボウズが取り組んでいるような複業の流れは波及していくのでしょうか

複業はもっと一般化・活性化していくのではと思っています。先日も前職の同僚に会ったのですが、そのときにも複業について相談を受けました。「働き方改革」の世の中のトレンドからも増えていくと思いますが、一時期のように年功序列で給与を上げ続けるというのが難しくなっている今、複業で収入を担保していくことは必要になってくると思います。

また、複業のためのインフラもネットを中心に整ってきています。クラウドでできる仕事や自分の価値を社会にアピールできるサービスなども登場しています。個人と社会とインフラの3つのトレンドが揃ってきている今、この流れはさらに広まるのではないでしょうか。

—今後メディクルで採用するとしたら、どんな人に来てほしいですか?

採用予定は全くと言っていいほどありませんが(笑)。強いて言えば、変化に柔軟な人がいいですね。急な変化があっても、そこから素直に吸収して、学ぼうと思っている人はどこでもやっていけると思います。

—今後、日本で求められる人材もやはり同様でしょうか。

はい、変化に柔軟に対応できる人が一番だと思います。そこには素直さという要素もあるし、これまでの成功を捨ててでもゼロベースで考えられるという要素もあります。

というのも、今は変化が速くて時勢を読むのが難しいので。そういった中で、新しいものに適応していける人は活躍の幅がひ広がるのではないでしょうか。

—ありがとうございました!

 

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